「夢に恋して」走り続ける

エフェメラルアーティスト
イベントプロデューサー
花絵師
藤川靖彦
  • 1961 年 4 月、東京都世田谷区生まれ
  • 日本大学芸術学部演劇学科卒業
  • 株式会社インフィオラータ・アソシエイツ代表取締役社長
  • 一般社団法人 花絵文化協会代表理事
  • Comision Gestore Internacional de Entidades de Alfombristas de Arte Efimero 理事
  • エンジン01 文化戦略会議会員
  • (株)インフィオラータ・アソシエイツ
    http://infiorata88.com/

インフィオラータ

誰もが主役になれる市民アート

「インフィオラータ」について教えてください

藤川:
インフィオラータとは、道路や広場をキャンバスに見立て、花びらを使って彩る大きな花絵のことです。イタリアでは、13 世紀頃から宗教的な行事として花を道に撒くフラワーシャワーの習慣があって、それが絵になり、フラワーカーペットになり、その上を司祭に歩いてもらうのが始まりです。大きな花絵を市民が一緒になって作るのが特徴です。

もともと私はイベントプロデューサーで、花とは無縁でしたが、2001 年に「晴海トリトンスクエア」開業に向けたオープニングのプロデュースをした時に、インフィオラータと出会いました。「晴海トリトンスクエア」は大規模都市再開発事業だったので、古い町を壊して新しい町を作り、新しい人を迎え入れる、新旧の人の出会いの場としてのイベントにしたいと思いました。アイデアを探していたところ、ちょうどその年イタリア年だったことから、雑誌の隅にインフィオラータの写真が紹介されていたんです。これが美しい花を使うだけでなく、“市民が作るアート”だと知り、すぐさまイタリアに飛びました。まさに求めていた人の出会い、参加型イベントだったのです。

藤川靖彦様

日本人にこそ体験してほしい市民アート

参加型の市民アートというのはあまり私たち日本人に馴染みがありませんが、どんな人が参加しますか?またその良さはどこにあるのでしょう?

藤川:
参加者は個人で申込みされる方が多く、会社やグループ単位で参加する人は少ないです。見ず知らずの人同士グループになってもらうので、最初はみんな恥ずかしがって会話もないのですが、5 時間以上一緒に作業しているうちにだんだんコミュニケーションをとり、チームになっていきます。一人一人が作るのは部分でしかないけれど、完成した時に離れて見ると、一つの大きな絵が出来上がっているわけです。これは感動的ですよ。この感動を皆で分かち合う。そうすると、完成後にはチームで飲みに行ったり、再会を約束したり、次のインフィオラータにまた参加したりと、インフィオラータがコミュニケーションの場として機能しているのを感じます。

インフィオラータはアート作品だけれど、作るのは参加者です。一人のアーティストではない。インフィオラータではアーティストをマエストロと呼びますが、まるでオーケストラの指揮者のように、今からどんな作品を作りたいかを参加者に伝え、参加者全員が音楽を奏でるように作品を仕上げていくんです。一人では決してできないような大きくて美しい作品を、皆で作り上げていく。そして仕上がった作品が世に出ていく。自分の作品が道行く人に見てもらえたり、写真に撮影されて SNS で紹介されたり、メディアに取り上げられたりする。こんな経験はそんなにないじゃないですか。「主人公になれる」のが参加型市民アートであるインフィオラータの大きな特徴なんです。

限りある命だからこそ情熱がある

インフィオラータのような限りある命のアートをエフェメラルアートと呼ぶそうですが、人はなぜエフェメラルアートに惹かれるのでしょう?

藤川:
エフェメラルアートというのは永遠に残るものではなく、消えていくものを創るアートです。インフィオラータで使う花にも命の限りがある。でも人の命に限りがあるからこそ、今この瞬間が輝くように、花も咲いている瞬間に命のパッションがあります。それは決してはかない美しさというものじゃなくて、命の圧力と言ってもいい。インフィオラータも出来上がった瞬間に一番魂が宿っていると感じます。一つの作品を作るのに何千本、何万本もの花を使いますが、その花に触れる参加者たちは、花のパッションにも触れている。また参加するということは、自分のパッションを花を通して作品に宿すことでもあるのです。

私は 2009 年に心筋梗塞で死にかけたのですが、実はその時には後悔がたくさんありました。後悔しながら魂が体を離れていくような感覚があったんです。幸い生還しましたが、あんな思い、後悔するような思いは二度としたくないと思いました。今では、何かをやりたい、何かが欲しいと思ったら、それは〝天のメッセージ“ だと信じています。思ったら即実行します。そしてそれ以来、体にも気をつけるようになりました。食事や睡眠、サプリなども大切だと思っています。特に最近は、〝休ませる“ことも大事だと気づいたので、睡眠不足したら昼寝をしたり、週に 2 日間は断食して内臓を休ませるなどしています。
もちろん、インジュヴ・オメガスリーも飲んでますよ。

藤川靖彦さん

東京オリンピックへの夢

藤川さんの夢を教えてください

藤川:
インフィオラータは、海外ではあくまでも宗教行事という位置づけですので、大切にされている一方、長い歴史の時間の中でマンネリ化したり、人が集まらなくなってしまっているという現状があります。私はイベントプロデューサーだから人を集めたいし、人に見てほしいし、人の喜ぶことを考えたい。そこで2012 年スペインで開催されたインフィオラータ世界大会では日本のアートである浮世絵をモチーフにした作品を創作するなど、伝統に縛られない新しい風を吹き込んでいます。スペインでは地元の新聞に大きく掲載されるなど、インフィオラータの世界でも注目されています。日本の華道が枠から飛び出して壮大な世界観を作ってきたように、インフィオラータも宗教という枠を超えて社会の中で様々な展開ができるのではないかと思っています。

私には今人生最大の「夢」があります。それは 2020 年の東京オリンピックで何かを残したい、ということです。そのために本当に一生懸命奔走している毎日です。私の座右の銘は「夢に恋して」なんです。恋って一生懸命になれるところがいい。生きているという実感がしますよね。だから仕事にも人にも、いつも恋しています。70 歳になっても恋していたい。これからも「夢に恋して」走り続けますよ。

藤川靖彦さんインタビュー